69.会いたかった

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 国民から選ばれた陪審員によって裁かれる裁判の場で、国王は今回の一連の事件について、ユタカが暗殺されかけた所からサザの裁判までを順を追って丁寧に説明した。    サザは判決を聞くまで自分を助けてくれた国王がどうなってしまうのかと生きた心地がしなかったが、国民達は国王の考えの通りの判決を下した。  ユタカを傷つけたヴァリスを殺害し暗殺者であることを隠蔽していたサザの行為について最大限の理解を示した国民は、国王を法を犯した罪にせず、無罪としたのだ。  国王は今のままで王座に着くことになり、改めてサザも罪が無いことが認められた。  また、国王はユタカ・アトレイドが死んだことになっていた王子で、隠していたことは自分の過ちであると深く謝罪し、ユタカを王子として認めるように国民に呼びかけた。  元々人々の支持の厚かったユタカが王子になることに反対する声は無く、慶ごととして受け止められ、国は新しい王子の誕生に一気にお祝いムードになった。  ただ、そんな中でサザはユタカが王子になることは大賛成だったものの、敵国カーモスの生まれの自分がイスパハルの王子の妻になるのはさすがにまずいのではないかと思い、国王に自分の気持ちを話した。  しかし国王は「お前ほどユタカの妻にふさわしい者はいない。気にするな」と言って、少しでもサザを揶揄する声があれば直接進言して守ってくれた。  そして国王は、ユタカが王子になる前は長く伸ばしていた髭を剃ってしまった。サザはそれがユタカととてもよく似た輪郭とえくぼを隠すためのものだったのだと気付いた。
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