69.会いたかった

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 元々国王と女王との共同君主制を取っているイスパハルだったが、国王は女王が不在であることを理由に、今後自分が間違った判断を犯さないためにと、共同君主にユタカを充てた。  ユタカは王子としての最初の仕事として、ヴァリスが不在になって空いた国軍責任者の席に大佐に昇進させたアイノを、イーサの領主にはヴェシとトゥーリを共同で付け、リエリをもう一度イスパハル国軍に推薦した。  アイノは「何で大佐になったのにユタカが上司なんだ。私が敬意を払うのは陛下と王子妃だけだ」と、相変わらずユタカに悪態をついた。  しかし、イスパハル建国以来初の女性の国軍責任者でもあるアイノは実際はユタカの話をよく聞き、魔術と剣士の学校の卒業者が受ける全ての試験で男女が差がなく合格する仕組みをすぐに整えた。    ユタカが王子になったことも人々を驚かせたが、それ以上に話題になったのはサザのことだった。  国王とユタカは裁判の後に御触れを出し、サザとアンゼリカとカズラが暗殺者の職を持つことを国として認めてくれたのだ。  そして、剣士や魔術士で対応しにくい戦いに備えるためとして、軍に暗殺者の部門を創設して三人に階級を付け、そこに所属させた。普段はいつも通り生活をして、必要があれば国王とユタカから直接サザ達が依頼を受けられるようにした。  サザは国王から辞令を受け取ると、肩書に『サザ・イスパリア少佐』と書いてあったので驚いてしまった。 「これ、いいのかな……?」 「サザはそれくらいのことをしたんだから自信を持って」  ユタカはそう言って微笑んだ。
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