69.会いたかった

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 ユタカは王子、サザは王子妃となり、リヒトと三人で王宮へ引っ越したが、ユタカは王子となっても相変わらず、洗いざらしのシャツが良く似合う、笑顔の優しい青年のままだった。  国民はそんなユタカのことをとても良く慕ったが、最初は城の召使い達を大いに戸惑わせた。  ユタカは王子になったが、前のように町に出て話を聞いたり軍の剣士の立ち合いを見てやったり、サザも貧しい人のところに行って様子を見たりと、前とはさほど変わらない生活を送っている。  リヒトは正式に魔術の勉強を始めることになり、毎日とても楽しそうだ。  王子のユタカと、エルフのリヒトと、暗殺者のサザ。  それぞれが全部、自分のままでいられること。  ただ、そのままでいられることがこんなに嬉しいことだったのだ。  サザはもう、無理に長袖の服を着ることが無くなった。  それは他人から見れば些細かも知れないが、サザにとっては本当に大きなことだった。
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