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「……うん。私もだよ。絶対そうする。
ずっと一緒にいよう」
でも、二人は痛いほど知っている。戦うことを仕事にする人間がそんな約束をしても、どれだけ無意味か。
その一方で、そう約束せずにいられない儚さも。
しかしそれでも、二人は剣士と暗殺者である事を辞める事は無いのだ。数奇な運命に翻弄されながらもその仕事が二人自身を形作り、生きる意味を与えてくれた。
そして二人は涙が出そうなくらいにお互いをよく理解していたからだ。
本当に大切だと思える人に、生きている間に出会えたことは、奇跡だ。だから、大好きな人と一緒にいられるこの一瞬を、本当に大切にしないといけないのだ。
ユタカはそっとサザの肩を抱いていつもの通り、優しく微笑んだ。
こうやって、この人の笑顔を、暗殺者であることを心配をせずに見ていられる毎日がある。
それだけで、サザは涙が出そうになる。
「……ねえ、少し屈んでくれる?」
「ん?どうした?」
サザは屈んで顔を近づけたユタカの首に腕を回すと、背伸びをしてユタカに口付けた。
ユタカは驚いた顔をしたが直ぐに笑うと、サザの頬に手を当ててもう一度唇を重ね、サザの身体が持ち上がるくらい強く抱きしめた。
サザも思わず声を上げて笑った。
「父さん、母さんも早くー!」
リヒトが土手の下から呼んでいる。
「今、行くよ!」
サザはユタカと手を繋ぐと一緒に土手を駆け下り、リヒトの所へ向かった。
(了)
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