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今朝も、外はしとしとと雨が降っている。
そのせいではないが、彼の気分もまた、どことなく湿ったように沈みがちだ。
高校一年生の橘 奏は、六月も終わろうとしているのに、まだ部活動を決められないでいた。
本当は、パソコンやロボットをつくるとか、プログラムを教えてくれるような部があったら入りたかったのだが、奏の高校にはそんな部はないようだ。
ほかの部をたくさん見学したけれど、どうも、どこもしっくりこない。
「だから奏くん、帰宅部にすればいいのに。何回も言ってるじゃない」
朝食を食べながら、一つ下の弟の巧に相談すると、あっさりそう言われる。
お父さんは、もう仕事に行ってしまった。
お母さんはいないから、二人だけの朝食はいつものことだ。
奏は言った。
「だけど、先生がダメだって。絶対、何か部活に入らないとダメって言われたんだよ」
これも、何回も話したことだ。
「でもそれ、入学式のときに、みんなに言われたってだけなんでしょう。
事情を話して、やりたいことがあるから帰りますって、言ってみたらいいのに」
巧が、二枚目のトーストをかじりながら言う。
奏のやりたいことというのは、ロボット作りとかプログラミングのスクールに通うことだ。
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