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学園に着くと健斗は自転車を降りて校門をくぐって、自転車置き場へと向かう。その道すがらに「おはよう」という声を聞いて、健斗は足を止めた。聞き覚えのある声に思わず、後ろを振り向いた。朝もやで顔ははっきり見えないはずだが、健斗にはそれが誰であるのか容易にわかるのだった。
「おはよう…… 健斗くん……だよね?」ジャージ姿の御厨碧は躊躇うように尋ねた。
「お、おはよう。御厨さん……」健斗は狼狽えるように返事をした。
碧は健斗に近づき、顔色が見えるほどの距離に来ると安心したように微笑みを見せた。
しかし、健斗はきょとんとしたように彼女に見入って、次の言葉を言い躊躇っていた。
「今日も早いね。朝練なの?」
「う、うん。今から音楽室に向かうところだよ」と健斗はクラリネットのケースを掲げるようにして言った。
「頑張ってるねえ! 青少年諸君!」碧はふざけて、健斗の肩を押した。すると健斗はちょっとよろけて後ずさりをした。
「諸君って……」健斗は周りを見て、他に人気が無いことを碧にそれとなく伝えようとした。
「相変わらず、細かいこと気にするんだね」そう言うと碧は悪戯にはにかんだ。「そんなんじゃいつまで経っても彼女なんか出来ないよ」
健斗は少し顔を赤らめて、慌てるように首を振る。
「べ、別に求めてないから!!」
「また、そんなこと言って!モテるんだから、そろそろ身を固めなって」
「僕はモテてないよ…… それに身を固めるって言葉の使い方間違ってるよ?」
「また細かいこと気にする~~!」また、碧は健斗の肩を押した。
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