マスラオ~闇の中、日はまた昇る

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「碧~~!どこで油売ってるの!監督が呼んでるよ!」遠くでソフトボール部のチームメイトが彼女を探して、声を張っていた。 「いけない!行かなきゃ!じゃあ、朝練頑張ってね」彼女は手を振って、朝霧の中に走っていき、姿を消した。    健斗と御厨碧は同じ里に住む幼馴染であった。明朗活発で奔放な碧は学業、スポーツともに優良で男女を問わず憧れの的であった。健斗も学業は彼女に引けを取らないものの体力面で見劣りするところがある。  しかし、唯一の弱点があるとすれば、音痴で音楽には一切興味が無いというところではないだろうか。  実は、そんな碧は健斗と同じ吹奏楽部に入部届を出した過去があったのだが……  あとのことは言うまい。  ともかく、今はそれぞれの部活に邁進し、お互い顔を合わせては励まし合っている。いや、むしろ碧の方が一方的に励ましていた。  実のところ、碧は健斗に気があるのかもしれない。しかし、そんなことは健斗が気にするところではなかった。 「やれやれ……」健斗は呆れ気味に呟いて、碧が消えたところから視線を外した。そうして、彼はゆっくりと音楽室へと歩いていく。
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