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その夜、時計の針は二二時を指そうとしていた。
そんな、どこかの歓楽街。とあるスナック。
看板にはまだ早いその時間その店の明かりは突如として消えた。
怪しげな男を一人、店の前に残して。
「おい、何やってる!早くしろ!」
「分かってるよ!いちいちビビってんじゃねえ!」
真っ暗な店内では、やさぐれた男の声が響いていた。
マグライトの明かりを頼りにレジや店内を物色して、現金や金目なものをメッセンジャーバッグに詰め込んでいた。その片隅のソファーには手足を縛られたホステスと客の姿があった。彼らは怯えながらこの災難が通り過ぎるのを祈るしかできなかった。
サングラス姿の店の前の男は腰に拳銃を隠して、煙草を吸いながら落ち着きなく周囲を見回していた。
風の強い夜だった。男は短くなった煙草を捨て、また新しい煙草を口に運んだ。風を凌ごうと壁に向かって、ライターを炊いた。その瞬間、彼は驚きのあまり大きく目を見開いた。壁に移った大きな人影に驚き、思わず腰に隠していた拳銃を引き抜いた。
「誰だ!!」男は振り返って怒鳴った。
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