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最後に女性の白い足首を見た記憶を残していました。
そのまま、めくるめく感覚のなかで、私は気を失ったようでした。
翌朝になると、私は目を覚ましました。
(夢だったのか…)
私は自分の服が乱れていないのを確認しました。
私はさりげなく腕を撫でます。
手のひらにぬるっとした感触があります。
自分の手足に何かぬめっと光っている痕を見つけました。
何かが這いずり回ったあとのようです。
唾液ではありません。
唾液の場合は乾いたあとはもっとぱりっとした跡になります。
ぬめぬめのままで残っているはずもありません。
アロエを切った汁のようなとろみのある液が、腕、足に残っています。
なめくじが這ったあとのアスファルトの光を思い出します。
夜行性のなめくじが這った跡というのはくっきりと残っているものです。
私は女性の指の感触を思い出します。
私はテントを出て、逃山の奥に向かって進みます。
泊まったテントはまたあとから入ってきた人が使うことになるのでしょう。
あちこちのテントから、生気のない人間が出てきてそれぞれに山の奥に入っていきます。
昨日よりもさらに血の気のない様子です。
私は鏡を持ってきていないので、自分がどのような顔をしているのか確認することが出来ませんが、同じような顔をしている可能性があります。
そして、あの女性のことを誰かに訊きたいのですが、話しかけられる気配ではありません。
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