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日曜日の昼、この前買った花柄のワンピースを着て紗奈が家に来るのを待っていた。今日の髪型は、2つ結びにしている。下ろしていても良かったが、今まで結んでいた癖なのか下ろしている髪が邪魔くさかった。かと言って、1つ結びにすると兎のしっぽみたいに短くて何か違う気がしたからだ。
自分の部屋で絵を描いているとピンポーンとインターホンがなった。私は、パソコンの電源を落として玄関へ急ぐ。
「はーい」
「やっほーって!? 望結変わり過ぎじゃない」
「そ、そんなにかな?」
「びっくりしたよ。あれだね。望結は、宝石になる前の原石だったんだね。じゃあ、今度は私がもっと磨いてあげる」
「お願いします!」
「任せたまえ!」
私の部屋に紗奈を案内し、リビングからオレンジジュースをコップに注いで持って上がる。紗奈は、机の上に鏡といくつかの化粧品を並べていた。
「望結は、元が白いからチークや口紅で色付けするだけの方が可愛くなるかも」
「私は、何すればいい?」
「ここ座って。前髪上げといてね」
「分かった」
慣れない手つきで前髪を上げる。鏡を見ると止めた所から前髪が解けて少し落ちて来た。紗奈は、何も言わずに私の前髪を再び固定する。それからは、黙々と私の顔と化粧品を見比べては、慎重に化粧品で私を彩った。
瞑っていた目を開いて紗奈が鏡を見せてくれた。そこには、私が居なかった。そこに居たのは、キラキラと輝く宝石の様な別の人だった。化粧をしたから幼さが引き立ったのか、少し大人っぽくなったのかは、良く分からないが。とにかく、ずっとその人を見ていられそうだった。
「どう? どんな気持ち?」
「凄い…… 私じゃ無いみたい。こんなにキラキラしてて宝石みたいなこの子を私は、知らなかった」
「そうだね。可愛いよ、望結。ほら、夏祭り行くよ」
「うん!」
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