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今の私は、どんな人混みの中にいても堂々としていられる。それどころか、今まで以上に目の前がキラキラして見えた。
屋台を照らす照明も横を過ぎ去るカップルの笑顔もたまに会うクラスメートの笑顔も。
クラスメートに会えば、皆驚きから入る。なんなら、紗奈を見掛けて「その子誰?」となる子もいた。それでも最後は、「可愛い!」とか「似合ってるよ」って言ってくれた。嬉しかった。可愛いって言う言葉がこんなにも嬉しい言葉だなんて初めて知った。
今なら分かる。合桜先輩が言った言葉の意味を。可愛いを知った私の世界は、変わった。自分自身の目で見る本当の世界は、イラストで知った可愛いや輝きよりもずっと、何倍にも色鮮やかで輝いている。
夏祭りもラストスパート。最後の花火が夜空に打ち上がる。いつも以上に楽しんだからか終わるのが、寂しかった。でも、この寂しいって思って見る景色もまた私にとっては、新しい世界だ。
私は、合桜先輩に見せた絵の表情と色合いを変えた。慣れない油絵具に苦戦しながら描いた。早く合桜先輩に見てもらいたい。絵も私も。
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