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素直に伝えるイラスト
7月20日。天気は、快晴。梅雨のじめじめとした季節を抜け、サンサンとした日差しが教室に差し込む。窓から見えるぐらい近くにある木にセミが止まっているのか、いつも以上にセミがうるさく鳴いている。期末テストが終わり土日を挟んだ月曜日の教室。女子達は、「やっと髪がまとまるよ」や「もうすぐ海の時期だね」など髪の事や夏休みのイベントの事について話している。周りの子達もそれを共感する様に頷いたり、笑ったりしている。
私には、さっぱり分からない。髪は、いつも後ろで一つ結び。前髪は、小学生の頃までは作っていたけれども、邪魔になって伸ばした。朝、寝癖で悩む事も無くなり朝の時間に余裕が出来て私的には、メリットしかない。
「ねぇ、望結文化祭に展示する絵決まったの?」
窓際側の一番後ろの席から落書き程度に教室の様子をスケッチブックに描いていた、
私。改めまして、穂波望結です。風波県立高校に通う高校2年生です。部活は、美術部に所属しています。
そして、さっき私に話し掛けて来た子は、高浦紗奈。私とは、違ってショートカットで少し肌が焼け活発で元気な女の子に見える。私とは、幼馴染みで同じ美術部に所属している。
さらに、今私達を悩ませている問題が文化祭に飾る作品と学校祭Tシャツのデザインを考える事。まだ、夏休みも入っていないのに今から考えるのは早いと思った人もいるでしょう。しかし、学校祭Tシャツの場合は外部の人の力を借りるので早めに仕上げて先生に渡さないといけない。まぁ、学校祭Tシャツのデザインは、そこまで問題ではなかった。私の得意分野は、デジタル画。丁度、デザインに興味を持ち、よく調べたいと思っていた頃だった為にすぐに出来た。と言っても、昨日先生に見せ終えたばかりだ。
そもそも何で2年生の私がデザインを担当したかと言うと美術部は、3年生2人と2年生2人と1年生4人構成の少人数だ。その大きな理由に私の高校は、スポーツ推薦者を多く受け入れている。その為、文化部にはあまり人が入って来ないのだ。
私は、先程まで描いていたスケッチブックを紗奈に見せる。落書き程度と言ってもそこには、誰が見ても教室の風景だと分かる様な絵を描いた。
「これを見て決まったと思う?」
「迷っているね」
「紗奈は?」
「私もまだ何だよね。それに望結は、絵が上手だから何を見せても問題無いと思うけどね。私は、先輩や先生に見せて良い反応が無いと心配なんだよね」
紗奈は、私の机にへなへなと倒れ込む。相当追い込まれているのだろう。目の下に隈が出来ていた。まぁ、それは私も人の事が言えないだろう。眼鏡を外して目元をぎゅっと押さえた。
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