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「………え?」
男の子の大きな瞳が点になる。理解できないといった様子で、できの悪そうな頭で考えを巡らせようとしている。
「……へ? はっ? ……どういうことだ?」
ぶつくさと何かを口に出している。その男の子の様子を見ていた、男の子の隣にいた女の子が耳打ちした。
「ねぇ、考えたくないけど……あの肉本当に……」
「言うな!!」
耳がキーンとなるほど、地下部屋に男の子の声が響き渡った。
「…………言わないでくれ」
「ご、ごめんなさい。“あの男”のハッタリよね」
子どもの茶番にも見飽きてきたので、三人の子どもに早く飯を食べるよう伝えた。
ーーー早く、早く、この肉を食べる姿が見たい……!
「あの、質問いい、ですか?」
「あ?」
メガネをかけたひ弱そうな男の子が、手を上げてきた。
「なんだ?」
「その肉……。本当に……ハルナちゃんの肉、ですか?」
「孝介?!」
男の子が顔面蒼白になりながら、メガネの男の子の襟元に摑みかかる。
「おまえ! おまえ、自分が言ってること分かってんのか?!」
「だって、だって、無事でいること自体おかしいだろ? 」
「だからって、そんな直球に言うバカがどこにいる!?」
「……考えたくもないよ、でも、これで二人目だろ? この男に連れてかれて戻って来てないのっ?」
「……っ!」
「茶番は済んだか?」
早くこの肉を食べて欲しい。
早く、悶えるような、絶望するような顔を見たい。
早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く!!
早く、歪んだ顔を見て果てたい……!
「くっそっ!」
「つかさ?!」
「つかさ君!?」
「ほぅ……」
肉料理が置かれている床に男の子が、ズカリッと座って、手掴みで肉を取り口の中に放り込んだ。
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