彩雲

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「ツキシロー! おかえりー!」 「おー! ハイシロ、元気そうだな。……すまんな。若木を持って帰ってくるのに四十年近くかかってしまった……」 「時計、ありがとう。ちゃんと直って戻ってきた。……夢見草の古木は、先日、役目を終えて枯れてしまったわ」 「そうか……早速若木を植えないとな」  白い双子は王宮の回廊を仲良く歩いていく。 「それはそうと、あの子は来たのか?」 「ああ、火の山の子? 来たよ。直前に(あけ)の国から知らせが届いてたから、あの子がもってた鑑札だけ手紙を付けて送り返した」 「で、あの子は? どした」  ツキシロが立ち止まる。ハイシロも続けて立ち止まり、いたずらっぽく笑った。 「ここにいるよ」 「え?」 「ここー」    自分のおなかのあたりをさする。 「ええっ! そんなに時間を戻しちゃったの?」 「だってさー。すっごいトラウマ抱えててかわいそうだったし、夢見草の力もあとちょーっとだったら頑張れそうだったしー」 「……生まれたの噴火直後だったって言ってたなぁ……。なんかあったんかなー」 「でね、でね、一つ頼み事されたんだぁ」 「ん? なに?」 「これ」  ハイシロは首にかけていた小袋から石の卵を取り出した。 「ツキシロが帰ってきたら、一緒に割ってって」 「そういえば、名前を付けてもらいたがってたなぁ……。そういうの、センスないんだけどなぁ」 「ダイジョブ! 一緒に考えるから!」 「んー、連帯責任だぞ」    ツキシロは頭をかきながらうなった。腰のあたりを探って小刀を取り出し、柄の部分を石に叩きつける。 「割れた?」 「うん? ……あ、これ!」 「ひゃー! オパールじゃん! 大当たりじゃん!」 「えーこれで名前考えるの? むずかしー……」  ハイシロは歓声を上げながら跳ね回り、ツキシロは頭を抱えた。  回廊にはやわらかな光がふりそそぎ、北国の遅い春の到来を告げていた。                      < 終わり >
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