光冠

3/4
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
 見上げると首が痛くなるほどにそびえる壁の中にはいると、町中はそこそこに賑わっていた。玄の民は皆、シロみたいな容姿なのかと思いきや、意外と色とりどりだった。聞けば、外から移住してきた民もいるのだという。  コガネは天蚕の織物を卸したあと、城門まで送ってくれた。時計の包みを託し、 「この時計の操作は、私らより玄の民の方がよく知っているから大丈夫だ」  と言って、荷馬車からおろした。荷馬車が市街まで下りていくのを見届けてから、城門に向き直る。  大丈夫。シロはそういっていた。  深呼吸して、城門のノッカーに手をかけた。  カリヤスから預かった納品書と時計を預け、シロのことを告げると、天井の高い大理石の広間に案内された。両側に、黒装束の憲兵が威圧的にずらりと並ぶ。自然と、シロのいで立ちを思い出す。奥まったところは数段高くなっていて、細工に凝った背の高い白い椅子があった。シロの手紙、偉そうな人のところに届いたのだろうか……。  しばらく待っていると、真っ白な人が椅子の前に立った。正確には、銀の刺繍を施された真っ白なローブをまとい、白いベールで顔を覆った人が立った。 「時計の納品、ご苦労。元通り動くようになり、安堵した。……そなたが、ツキシロの命で、ここ(げん)の国につかわされた者だな」  硬く、重々しく、よく通る声。  思わず頭を下げる。 「はい……相違ありません」  一呼吸の、間。 「あい、わかった…………。この者は、(あけ)の国の罪人。直ちに捕らえよ!」  高らかに響いた鋭い言葉が胸を突き刺した。  え? どういうこと?    憲兵が左から右から一気に取りつき、体の自由を奪い、引きずっていく。  なんで? どうして? 手紙には何が書いてあったの?  シロは、大丈夫って、また会えるって、そう言ったじゃない。  そう言ったじゃない……。  目の前が真っ暗になった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!