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つくもがみさま
天気は雨のち人。
そんなことを同級生に言ったら、頭がおかしくなったのかと笑われるに違いない。ただでさえポエムを量産していて面白がられている私は、「またか」と呆れたように指をさされて揶揄われるに決まっている。
でも、嘘じゃない。
目の前で起きていることは、フィクションでも、何かの冗談でもない。事実は小説より奇なりとは言うけれど、これはあまりにも突飛すぎるだろう。
午後から降水確率百パーセントの日に傘を忘れた。家に帰る途中で、土砂降りになって……雨宿りをした先で、傘を拝借した。「ご自由にお持ち帰りください。お代はいりません」と書かれていたから、ありがたく貰うことにした。薄汚れた金色の鈴がついた大人用の傘だ。それを手に取ったところまでは現実だった。
そして、少し古くなって汚れがついた青い傘を開いたときだった。退屈な日常が、花が咲いた瞬間にどこかへと吹き飛んでしまったのだ。
傘の開く音と、弾けた雨音。
そして、バシャンッと激しい水音と、何かが強く地面に叩きつけられた音。それを認識した数秒後、私はかつてないほど声を張り上げて絶叫することになる。
私の目の前に、『人』が降ってきたのだから。
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