28人が本棚に入れています
本棚に追加
二
恋愛でやつれる子、いる。そういう子は、端から見ると不幸せそうな恋をしていることが多い。
私も、本当はやつれてしまうほどに彼といることが負担になっていたんだろうか。それとも、別れ話で憔悴してしまったんだろうか。
バーを後にして、とぼとぼと力ない自分の足取りを見つめながら家に帰り、洗面台の鏡の前へと直行した。
「……うわ、化粧しててもクマすごい」
毎日見ているはずの自分の顔。でも、そういえばもうずいぶん長い間、念入りにチェックするのを怠っていた気がする。
シャワーを浴びて化粧をきれいに落としてから、改めて自分の素顔と向き合った。
「肌荒れまくり……」
マスターは“やつれた”なんてやんわり伝えてくれたけど、たぶん本当はそうじゃない。
見た目の質感はガタガタ、触るとザラザラ。頬の辺りは荒れて皮膚の内側が赤みを持っている。ニキビは小さいものだけじゃなく、大きなものもポツポツと、自分では見えてなかった顎の裏にまで。
最悪だ。
こんなに酷い状態になってたなんて。
思い返すと、彼とつき合ってから努力を怠っていたかもしれない。
彼がベタベタに甘やかして可愛いって褒めてくれるのを真に受けて、ちょっとくらいの肌荒れは化粧でごまかして……。
しかも、食事も居酒屋とか牛丼屋とか焼き肉屋とかラーメン屋とか、彼の好みに合わせてたし、彼の家で家飲みして、ついつい夜中に甘いものやスナック菓子を食べちゃうようなことも多々――。その上深夜までいちゃいちゃしてそのまま化粧を落とさずに寝ちゃったり、ていうか落としてもコンビニのメイク拭き取りシートで拭くだけだったり……。挙げ句の果てに寝不足のまま仕事行くのが通常運転だったし。
うわぁ。なんて酷い生活。
そのツケが今、回ってきたんだ。
彼が素っ気なくなったのも、本当は私の劣化が原因なのかもしれない……。
最初のコメントを投稿しよう!