彼は私の顔が好き

生まれ変わる準備

　私は入れようとしていたDVDをケースに戻すと、財布を持って本屋へ向かった。
　自分が人生史上最低な顔だということは気にも留めなかった。

　書店に入って他の棚には目もくれずに向かったのは、美容の棚だった。
　背表紙が並んだ中の、ニキビ、美肌、という言葉が入っている本を取ってレジに向かった。

　家に帰って本を読みふけり、動画サイトで美容アカウントが勧めている化粧品を買いあさった。

　その日はゆっくりとお風呂に入り、22時には眠った。

　翌日から行動開始だ。

　5時にスマホの目覚ましが鳴った。
　目覚ましのスヌーズ通知を5回とめてやっとこさ体を起こした。
　ストレッチをしてからランニング。
　こんな時間に起きているのが不思議だ。
　街はいつもより静かで、空気も少しひんやりしている。
　すがすがしい――。