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少しの沈黙の後、奏多さんが再び話し始める。
「だから桜さんがこの先、華月流の為に婿養子をとるのを僕は黙って見てられません。華月流は桜さんが継げばいい。桜さんには跡を継げるだけの力量がある、それは家元も分かっているはずです」
父は腕を組んだまま何も言わない。
「桜さんを側で支えたい、一緒に居たい……それが一ノ瀬の実家を継げない理由です」
奏多さんは今度は自分の両親の方を向き、正座をしたまま頭を下げる。
「奏多……頭を上げなさい」
奏多さんの父親が声をかけ、奏多さんは頭を上げた。
「なぁ横から口出して悪いけど、奏多まだ全部言ってないじゃん」
私の隣にいる光君は、奏多さんに向かって話す。
「光、だってお前……」
「あぁ、決心ついたから言っていいよ、っていうかもう俺が言うわ。一ノ瀬の実家は俺が継ぐ。一応、俺も一ノ瀬の息子だし継ぐ権利あるやろ?」
光君のサラッとした重大発表に全員光君の方を向いた。
「光、ホンマに一ノ瀬を継いでくれるんか?」
奏多さんの父親は驚いた様子で光君に尋ねる。
「あぁ。少し前に奏多に相談されてたんだ、実家を継ぐ気はないか?って。一ノ瀬の実家は奏多が継ぐもんだって思ってたから考えた事なかったけど、俺も茶道は好きやし別に跡を継いでもいいかなって思って」
光君はニカっとした笑顔で奏多さんを見る。
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