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「さ、桜?」
「少しだけ……このままで居させて下さい」
私は奏多さんの胸に顔を埋めてそう囁く。奏多さんと一緒にいれる事が夢ではなく現実であるという事を実感したかった。
私の気持ちが通じたのか、抱きつかれて動揺していた奏多さんも私を力強くギュッと抱きしめてくれた。
「奏多さん、華月流の次期家元の話……本当にいいんですか?無理してませんか?」
私は顔を上げて奏多さんの表情を伺う。
「無理なんかしてへん。こんな騒動を起こして茶道家の道はもう諦めなあかんって思ってたから逆に有難いわ。ただ、華月流の凄さを知ってるからプレッシャーはあるけどな」
「奏多さんなら大丈夫ですよ」
「うん、頑張るから……ずっと俺の側におってな」
奏多さんは私の頬に手を当て微笑むと、そのまま私にキスをした。
「ヤバイ、もう止められへん」
何が?と思った瞬間、奏多さんは私をヒョイっと抱きかかえベッドに移動する。
「か、奏多さん、下にはお互いの両親が……」
「大丈夫や。酔っぱらって盛り上がっとるし、俺らの事なんて忘れとるわ」
そう言いながら奏多さんの唇が私の耳元に触れる。その唇は首筋をなぞりながら進み、また私の唇に戻ってきた。
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