追憶

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2度目の受験先は、東京都八王子市にあると言われている帝京大学だったんだけれど、此処の試験問題はめっちゃ簡単で、………だけど、答案用紙に向かおうとすると、馬鹿デカいスズメバチが答案用紙のど真ん中にやって来て、そこから動こうともしない。 それも、一度ならぬ2度も3度も。こう見えて、ボクってどちらかって言うと、内気でさ。人前で声を出す勇気も無くて。こんなボクが俳優になりたいだなんて、誰しもがおこがましいとさえ思ってしまうよねぇ。 だからなのかしらねぇ。俳優って、人前や舞台上では、他人を演じられる。ボクは、理想の自分を演じたかったんだ。イヤな事はイヤだと言える自分。そんなボクときたら、誰に対してもはっきりと伝える事も出来ず、只々ヘラヘラと締まりの無い笑顔で誤魔化してばかりで………。 もし、この世に神様がいると言うのなら、どうして神様はボクの様な人格を持った何者かを生み出したのかしらねぇ。そして、どうしてボクに詰まらないイタズラばかりするのだろう。 嗚呼、この受験も失敗に終わるのか。 思わず、帰路が遠く感じられた。どうせ故郷へ戻るくらいなら、ひと思いにこの場所で死んでしまおうかしら………。 東京都八王子市からJR中央線で東京駅へ向かう途中に『高円寺』と呼ばれている駅があるのだけれど、その町は阿波踊りが盛んな事で有名らしいのだけれども………。
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