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プロローグ
洗練された近代的な建築物とレンガ造りの重厚な町並みが見事に融合した、デンマークの首都・コペンハーゲン。
精錬された北欧デザインの家やお店が並ぶその街並みは、歩いているだけで楽しい。
お城や宮殿、教会などの歴史ある建造物も多数あり、おとぎの街にふさわしい美しい景観に目を奪われ魅了される。
夏休み期間を利用して、俺はコペンハーゲンに2ヶ月間、建築短期留学にやってきた。
中心部からやや離れた、北側の運河沿いにある、鮮やかな赤の建物と緑のコントラストが美しい星の形をしたカステレット要塞を訪れた際に、俺はスリに合い、水の塀に落とされてしまった。
溺れ死にそうになった俺を、君は河岸に引き上げてくれて、胸骨圧迫と人工呼吸をして助けてくれたね。
柔らかいくちびるが重ねられ、温かい息を吹き込まれた俺は息を吹き返した。
そして、目の前にいた栗色のふわふわした長い髪の毛と青味がかった黒い瞳をした華奢な体つきをした君の姿を見て、俺はコペンハーゲンの水辺にたたずむ人魚像の化身だと思った。
『ーー人魚像の化身じゃないよ!!私、真珠。天沢真珠、16歳』
日本語で『人魚像の化身?』と言った俺に対して、君は大きな瞳をパチクリさせ天真爛漫な笑顔を浮かべ日本語でそう返してくれた。
その笑顔を見た途端に、頭の芯がくらっとなって、俺は君にーー恋をした。
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