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「では、お忘れ物はございませんね?」
ロビーまで見送ってくれた館長さんに、私は「また来てもいいですか?」と訊いてみた。ここが招待制という事を思い出したからだ。
「もちろんです。もしあなたの姿が見えたら、この扉を開いてお出迎えいたします」
館長さんの回答にホッとした時、壁の砂時計の絵が視界を掠め、微かな違和感を覚えた。
あれって、あんな絵だっけ?
「どうした?」
外に出ようとしていた彼が立ち止まって私に声をかけた。
私はちょっと気になったけれど、今度来た時にちゃんと見ればいいかと思い、
「ううん、何でもない」と答えた。
「館長さん、ありがとうございました」
「お邪魔しました」
私達は揃って会釈すると、図書館を後にした。
館長さんは、見えなくなるまでずっと、私達を見送ってくれていたのだった。
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