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「やみそうにないなぁ」
大きな公園を横切る途中、私は視界に入った建物の軒先に避難した。
雨に濡れた体が体温を奪っていく。
強まる雨足を恨めしく眺めていると、ふいに背後の扉が開いた。
「もしよろしければ、雨があがるまで中でお待ちになりませんか?」
上品な口調に振り向けば、見た目も紳士的な男性がにっこりと微笑んでいた。
2、30代くらいの、若い男性だ。しかも、イケメンさん。
「ええと…ご親切にありがとうございます。でも大丈夫です」
あまりに丁寧なお誘いに驚いた私は、咄嗟に断っていた。
男性はスーツをきっちり着ていて、制服姿で雨に濡れてる私は、気後れに似た感情が出てきたのだ。
そもそもこの公園は何度も来たことがあるけど、こんな趣がある瀟洒な洋館は見覚えがなかった。
もっとも、広大な公園の敷地を隅々まで把握してるわけではないので、前からあったと言われても納得できてしまうけれど。
「ですが、やみそうにありませんよ?雨」
暗い空を見上げる男性につられて私も顔を上げた。
芯のある暗さの雲が、私を押し潰しそうだ。
そんな印象を感じた私に、男性は、
「大丈夫、ここは図書館ですから、遠慮なんかいりませんよ」
と笑った。
「え?図書館?」
「ええ」
返事しながらも男性はもう扉を開いて、エスコート体勢になっていた。
私は数秒迷ったものの、背中に寒気が走ったので、仕方なく後に続くことにしたのだった。
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