時の図書館

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建物の中に入ると男性が恭しく腕を広げてみせた。 「ようこそ、“時の図書館”へ」 「…時の図書館?」 「はい。時に関すること専門の図書館です。私は館長をさせていただいております」 「館長さん…」 私は公園内に図書館なんてあったかなと不思議に思いながら、建物内を見回した。 外観にも劣らない雰囲気ある内装はホテルや高級レストランのようで、アンティークと思しき家具がセンスよく配置されている。 正面には”時の図書館”らしく、白黒の砂時計の絵が飾られていて、おしゃれだ。 ロビーの左側には、数段下る階段があり「段差にお気をつけください」と男性…館長はそう言いながら案内してくれた。 階段を下りた先には広い部屋があって、高い天井まで壁一面に本が並んでいた。2階分くらいの高さになるのだろうか。ロビーは一般的な高さの天井だったから、余計に空間の広さを感じる。 両サイドには階段があり、その上に本棚に沿って細い通路が設けられていて、上部の本はそこから取るのだろう。 本棚の手前、部屋の真ん中には大きくて丸い暖炉が柔らかな炎をパチパチ揺らしていた。 暖炉を囲むようにソファや椅子が並んでいて、寛げるようになっている。 本棚を向いて左右には大きな格子窓。 そこに映る雨の仄暗い景色と暖炉の明るさのコントラストが、何とも言えなく絶妙だ。 右奥に置かれた長椅子には読書に集中してる女性がいて、私は、館長さんと二人きりでないことにちょっとホッとした。
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