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エピローグ 神様の涙
あの日からずっと雨が降っている。
彼女の流した涙が雨となり、目に見えるものとなっている。
いじめや差別がこの世界から無くならない限り、雨が降り続ける世界になるだろう。
『やはり、地球温暖化ガ原因でしょうか?』
『このグラフを見てもわかるように……』
ほら、ニュースキャスターも専門家も見えているものしか信じない。
「だから雨が降り続けるんだよ。」
僕は吐き捨てるように言った。
雨という見えるものだけを注目して、彩月いや、神様の存在なんて誰も注目しない。
昔は神様が怒っているとか思っている人が居たみたいだ。
情報が次から次へと手に入るこの社会だからだろうか。
こういう人が居なくなったのは…
人の心の傷も彼女の存在さえも。全て、もう何も無かったことになっている。
「お使い行ってきて!」
「わかった。」
この雨が止む日はそれは彼女が笑う日だ。
街に出ると黒髪の長い髪を持つ、彼女に似ている子を見つけた。
けれど声はかけなかった。
声をかけたらまた僕の前から消えてしまう。
それが怖かった。
その子はきっと彩月だ。
誰にも心配されていない。
ただただ美しい涙を流しながら傘もささずに歩いていた。
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