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ケイティと三千年ぶりの再会 その2
「ただいまー。って、あれ? そういえば、なんで逃げてたんだっけ? あ、そうだ。ゴリラみたいな握力をしていたアイツから逃げていたんだ。まあ、どうやら上手く撒けたようだし、良かった良かった! あはははは!」
勝利の高笑いをしていると、ガチャリと玄関が開いて先程のエルフの女が俺の家に入ってきた。
「あ、やっぱりここにいらっしゃいましたか。ご主人様に追跡をするための魔術を付与していたのですが……空をずっと飛んでいたら警察の方に『丈の短いスカートを履いて空を飛んでいる女性がいると通報があったですけど』と言われて捕まえられまして。事情を説明していたらはぐれてしまっていたんです」
「……なるほどね。で、なんでお前が普通に俺の家に入ってきたんだ? あれか? もしかして俺、入る家を間違ったかな?」
俺を追ってこの家に入ってきたことは明白だったが、もしかしたらもしかするかもしれないので、立て付けの悪い玄関の扉を開けて、部屋番号と表札を見る。
……いや、やっぱりここは俺が住んでいる家だな。間違っていない。
家の中に入り、玄関で俺の行動をつぶさに観察している彼女に声をかける。
「あははは。結構おちゃめな一面があるらしいな。でもあれだぞ? そっちが入る家を間違っているぞ? というか、もしかしてご近所さんか? であれば、明日にでもお引越し願いたいんだが。俺は極貧で引っ越しする金も無いんだよ」
彼女の背中を押して、玄関から追い出そうとしたのだが……びくとも動かない。いや、これ地面に打たれた杭みたいだな。
五分ほど格闘したが、一切動く様子がなかったので諦め、もう一度彼女に声をかける。
「というか、さっきから一言も話していないと思うんだが……どうしたんだ? てか、これはあれか? 俺の夢の中の世界か? それにしてはお前の体の柔らかさとか結構リアルだったと思うんだが」
太ももとかぷにぷにだったし、胸もめちゃくちゃ柔らかかったし。
え? いや、わざとじゃないんですよ? 決して意図してやったことではなくてですね。なんとか彼女を動かそうと試行錯誤した結果、たまたま、ほんとうにたまたまその部位を掴んでしまったと言うか。別にスケベ心があったわけじゃないんです。なので、俺は悪くないんです。
心の中で言い訳をしていた俺だったが……彼女が俺を見つめたまま一切口を開こうとしてこなかったので、本当に夢かと思い始める。
「おかしいな。どこから夢だったんだ? いや、でも……クンクン。こいつの体臭とか嗅いだこともないくらいいい匂いだし……モニュモニュ……胸もありえんぐらい柔らかいし……ペチペチ……太もももハリがあるのに柔らかいし……どれもこれもリアルだよなぁ……」
ヤリタイ放題しながら、自分の性欲を彼女にぶつけ……あ、いや訂正。夢かどうかを検証する。
たっぷりと十分程彼女の体を犯罪まがいなことをしながら堪能していたのだが……突然『分かりました!』とか彼女が大きな声を出すもんだから、驚いて腰を抜かしてしまった。
「……やっぱり夢じゃないのか……」
「……散々好き勝手してくれたお礼は後からしますね。ですが、先に聞いてください! ご主人様の記憶がない理由が分かったのです!」
……記憶がない理由? 何を言っているだ、こいつは。
「俺は記憶喪失とかそういうのじゃないぞ? ちゃんと小さい頃の記憶はある。あのときは幼稚園の年長さんのときだったかな。トイレをする夢を見てな? 夢の中で用を足していたんだが、なぜかそれが現実と連動していてだな。おねしょをしてしまったんだよ。いやー、あのときは大変だった。隠蔽工作をしようとしたんだが俺は当時幼稚園生。どうすることも出来なくてなぁ……結局親にバレて叱られたよ」
「……そ、そうなのですね。その……恥ずかしい過去を晒していただいたところ悪いのですが、そうではなくてですね。先程も言ったようにご主人様は『天才魔術師アイゼア様』の生まれ変わりなのですが、その御方の記憶をご主人様は引き継いでいなかったのです。で、おかしいと思ってご主人様の『奥』を魔術を使って見ていたのですが……ようやく解析が完了して原因が分かったのです!」
……え? 俺ただ赤っ恥かいただけじゃん。ひどい!
というか、まず『生まれ変わり』云々の話を前提に話さないでほしいんだが……
しかし、俺が口を挟む前に彼女がドヤ顔で結論を言ってきた。
「ずばり! 『天才魔術師アイゼア様』に関する記憶が何者かによって封印されているのです! これが結構厳重に封印されていまして。例えるなら殿方がエロ本を隠すときみたいな感じですね。めちゃくちゃ厳重です」
……いや、それって結構ガバガバじゃね? 良くお母さんとか奥さんにバレてるじゃん? それで怒られているじゃん?
「……まあ、そこら辺はどうでもいいか……。で? 俺がその人物の『生まれ変わり』で、記憶が厳重に封印されているとして? それが全て事実だという証拠はどこにあるんだ? どれもこれも胡散臭いぞ。訪問販売してくるセールスマン並に胡散臭い」
しかし、俺の言葉に対しても彼女は自信満々といった顔をしてくる。
……なんか鼻につく顔だな。よく分からんけど。
「私の言っていることが全て事実だと証明する方法はあります。ご主人様の過去の記憶の封印を解けばいいのです。ただ、それにはその……魔術師が興奮した時に出ると言われているホルモン『セロアドリン』をご主人様に一定量分泌して貰う必要があるのです」
……セロアドリン? そういえば学校の生物の授業で聞いたことがあったような気がするな。確か……脳から分泌されるものだったはずだ。でも……
「そんなものどうやって分泌するんだよ。出せって言われても出せるもんじゃないだろ?あと、興奮するって言っても色々あるじゃん? 具体的にどう興奮したらそのホルモンが出るんだよ」
「では、時間短縮のために実践しながら説明しますね。……えいっ!」
俺が了承をする前に、ケイティなる人物はゴリラ並みの力で俺の顔を引き寄せ……彼女の豊満な胸に押し付けてきた。
プニュンという擬音がしそうなほど柔らかい胸は、俺の顔の形状に合わせて変形し、極上の快感を俺に与えてくる。
……手で触るときと全然違う……すげぇ……
「え、えっとですね。『セロアドリン』は性的な興奮、または怒りなどで発生するものでして。厳密にはちょっと違うんですけど、ほとんど同じものだと考えてもらっていいです。で、それがある程度分泌されると……おそらくはご主人様の記憶に掛けられている魔術的な封印が一時的に解除されるはずです。ただ、その状態を保てるのは興奮度合いにもよりますが、今回は初めてですし、おそらく三十秒くらいかと……」
いや、話が頭に入ってこないんですが。おっぱいの柔らかさで思考がいっぱいいっぱいになって頭が真っ白に……あ、やばい。俺の息子さんが『おはよう!』って言ってきた。
そんな感じで興奮しながらケイティの胸に顔を埋めて、一分。俺は過去に体験したこともないくらい興奮し始めていた。胸のやわからさもさることながら、彼女の体から漂ってくる甘い匂いがひどく俺を興奮させるのだ。抑えなければと思いながらも興奮度合いはドンドン上がっていき、心臓の鼓動が早くなる。
(……駄目だ。このままだと彼女の話が嘘か本当か判断する前に頭が猿になってしまう……!)
しかし、臨界点まであと少しだというところで……今までの興奮が嘘のように消え、何も考えられなかった頭が回り始めて……体の奥底から力がみなぎってくるような錯覚を覚える。
そして……
「……あー、なるほど。確かにケイティの言う通りだ。お前の言っていることは事実だな。よく分からんが少しだけお前との過去を思い出した。これだけだと本当に生まれ変わりだとは判断できないが……理屈じゃなくて魂がそうだと言っているみたいな? ……てか、性的に興奮して思い出すとかどうなってんだ? 記憶の封印の解除方法、おかしくない?」
赤の他人から見たら何言ってんだ? と言われそうだが……自分が『天才魔術師アイゼア』なる人物の生まれ変わりであるということをなんとなくだが理解できた。いや、本当に何言ってんだ、なんだが。
……でも……世の中、不思議なこともあるもんだなぁ……
しかし、どうやら記憶が戻ったからと言って俺の人格が消えるわけではなく、あくまで『記憶のみ』というような感じだ。いや、正確に言えば他にも戻っているものがありそうだが……あ、封印が元に戻った。
……あれ? さっきまで俺は何を考えていたんだっけ? 思い出せないな……
「おそらくは、あえてこの封印の仕方にしたのだと思います。理由までは不明ですが。ただ、思い出していただいて嬉しいです! では、これから宜しくおねがいしますね! ご主人様!」
ケイティは嬉しそうな顔をしながら、これからお世話になります宣言をしてきた。
……再度記憶が封印されてよく分からなくなったが、彼女が可愛いのでヨシ!
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