1枚目 「わたし……!あなたに助けてもらったパンツです!」

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1枚目 「わたし……!あなたに助けてもらったパンツです!」

「あの……わたし……」  休日、一人で趣味を楽しんでいるところに訪れた突然の来客は、やけに真剣な顔で俺のことを見つめている。  しつこくチャイムを押されて仕方なく扉を開いた。冴えないセールスマンか、貼り付けたような空虚な笑みを浮かべた御婦人かと思っていたが、そこにいたのは、大きな胸が目立つ一人の若い女性だった。 「果物の訪問販売や宗教の勧誘ならお断りだ。他をあたってくれたまえ」 「いえ!ちがうんです。その……」  大切な趣味の時間を邪魔されて不機嫌だった。  若い女だとしても、唐突に他人の家に訪問するやつにろくな奴はいない。  俺は、不機嫌さを隠そうともせずに、玄関の扉を閉めようとした。  しかし、扉を閉めることは失敗に終わった。  なぜなら、玄関の扉と敷居の間に足を滑り込ませた、目の前の女性によって阻止されたからだ。 「わ、わたし……!あなたに助けてもらったパンツです!」 「はぁ?」  セールスならすべてお断りだと改めて言う必要がある。必要なら女性といえど警察のお世話になってもらうしかないという旨のことを言うために、一呼吸を置いた瞬間、その言葉は放たれた。 「だから!わたしは、あなたに助けてもらったパンツなんです!」 「帰ってください」  宗教でも、セールスでもない。  目の前にいるのは明らかに異常者だ。  刺激してはいけないとなるべく丁寧に対応しよう。 「証拠をお見せします!きっとこれを見たら思い出すはず……」  どうにか帰ってくれという俺の祈りも虚しく、彼女はあろうことか玄関の前で深めの緑色をしたニットワンピをたくし上げ始めた。  階段を誰かが上がってくる音がする。  騒ぎになって俺の趣味が詰め込まれた部屋に警察や近所の住人が踏み入ることだけは避けたい。 「待て!やめろ!わかったから。とりあえずこっちで話を聞かせてくれ」  苦渋の決断を強いられた俺は、この異常者をとりあえず部屋に押し込んで、近隣の人から誤解されるという最悪の事態を避けることを優先した。  触れるとやわらかく、なめらかな肌をした彼女の手を取って、玄関に引き入れた俺は、急いで扉を閉める。  そのまま、息を殺して耳を澄ましながら、近づいて来ていた足音が部屋の前を通り過ぎて遠ざかっていくのを待った。 「……もう行ったみたいだな」  ほっと胸をなでおろした直後……異常者を家に引き込んでしまったことをすぐに後悔した。 「すごーい!」  奥の部屋から聞こえてくる声で、女が目の入る範囲にいないことに気がついた俺は、溜息をつく間もないまま家に上がり込んでいるであろう彼女の姿を探すために部屋の奥へと向かった。
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