運命の人

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さっき、『エブリー』で見かけたミステリー。 もしかしたら久々に、心の琴線にふれる作品に出会ってしまったかもしれない。 絵梨の胸が高鳴る。 その作品の作家名は、ぽあろ。 男性なのか女性なのかは不明だが、ミステリーのみを定期的に投稿しているようだった。 冷静なタッチで謎を解き明かしていく様に、絵梨の心は完全に持って行かれた。 凄い、凄すぎる。 こんな事をこんな風に書けるなんて。 感動した絵梨は、その勢いのまま、自身もミステリーを投稿していた。 作家名は迷わず衣傘クリスにした。 大好きな作家、アガサ・クリスティーから取ったものだ。 そして興奮冷めやらぬままに、ぽあろの過去作品を全て読み終わった頃には、夜が明けていた。 幸いその日の授業は午後からだ。 絵梨は満足そうに布団に入ると、眠りに落ちた。 やばい、寝過ぎた! 絵梨は青ざめながら着替え、荷物を抱えて家を飛び出した。 スマホを充電器に差しっぱなしにしていることは完全に忘れていた。 気付いたのは電車に乗ってからだったが、時すでに遅し。 その日は一日スマホなしで、日頃どれだけスマホに頼っているのか痛感させられた。 そわそわしながら家に帰って来た絵梨は、自室に飛び込むとスマホを手に取る。 LINEをひとしきりチェックし終えた後、メール通知が来ていることに気付いた。 『エブリー』からだ。 コメントが1件、届きました! 絵梨の口から、ひえっともふわっとも聞こえる謎の声が発せられた。
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