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“ドキドキしながら読みました。面白かったです。 ぽあろ”
ぽあろさんからコメントが届いてる!
絵梨は初コメントがまさかの憧れの作家からだったことに感激した。
無駄に部屋を歩き回りながら、何度も一行のコメントを見返した。
間違いない。夢じゃない。
ぽあろさんに、面白いって思ってもらえた!
布団にぼすん、と転がりながら、絵梨はそのコメントに返信した。
“コメントありがとうございます。ぽあろさんの作品、全部読みました。どれも面白かったです。新作が楽しみです。 衣傘クリス”
「全部読んだなんて、ちょっと重たかったかなぁ」
絵梨は自身のコメントを見返しながら、ごろんごろんと布団を転がった。
「ほら、絵梨! ご飯出来てるってさっきも言ったでしょ!」
母に呼ばれ、後ろ髪を引かれながら絵梨は食卓に向かった。
返事、来るかな。
ぼんやりと絵梨が考えている向こうで、
「あなた! ご飯冷めちゃいますよ!」
と母が父を急かす声がする。
まもなくして現れた父は、何だか少し楽しそうだった。
「どうかしたの?」
とつい絵梨は声をかけてしまう。
「え? いや、東野圭吾の新刊は良いな」
慌てたように真顔に戻る父に、絵梨は目を見開いた。
「そうか」以外の言葉が返ってきた。
しかしそんな父に絵梨が言った言葉は、
「そうだね」
だけだった。やはりそう簡単には距離は縮まらない。
絵梨はふう、とため息をつくと、豚の角煮にかぶりついた。
返事、来るかな。
再びぽあろのことを考える。
返事、疑問形で終わらせれば良かったかな。
後悔するが、もう遅い。
ぼんやりと食器を片づけ、再び部屋に戻ってスマホを見る。
通知は来ていない。
がっかりしながら#ミステリーで検索をかけ、しばらく読み耽った後、布団に潜り込んだ。
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