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“また読んで下さり、ありがとうございます。衣傘さんの新作も読みました。凄く好みの作品でした。 ぽあろ”
好みの作品!私の事、好きだって!
……いやいや、好きなのは作品だから。あくまで。
絵梨は浮かれる自身に突っ込みを入れた。
何か、何か返信しなきゃ。
“こちらこそ、ありがとうございます。ぽあろさんはいつもミステリーを書いてますね。ミステリー、好きなんですね。私もです。 衣傘クリス”
慌てて書いたら、下手な作文になってしまった。
絵梨は頭を抱えながら、よろよろと食卓に向かった。
生姜焼きを口に運ぶが、全く味がしない。
その向かいで、父がおかずなしでご飯ばかりを食べるという不審な行動を取っていたが、絵梨が気づくことはなかった。
部屋に戻ってすぐ、通知が来た。
“謎を解くのが昔から好きです。衣傘さんは好きなミステリー作家はいますか? ぽあろ”
そんなのは決まっている。父の書斎で読み漁っていた作家。
“アガサ・クリスティーです。ぽあろさんは、誰ですか? 衣傘クリス”
すぐにぴろん、と通知が来た。
“私もです。奇遇ですね。特に『終りなき夜に生れつく』が好きです。 ぽあろ”
絵梨は息を呑んだ。
読後感が独特で、一週間くらい引きずった作品。
絵梨が最も好きな作品。
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