お父さんは牛みんな牛

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 僕のお父さんは牛乳を飲まないと大きくなれないぞと言って僕に無理矢理、飲ませることがよくある。それと四つん這いになって背中に乗せたお母さんに自分の鼻環に通された紐で操られながらモーモー言うのが好きだ。根っからのMだから。それとホルスタインが好きだから黒地に白い斑模様があるセーターやシャツを好んで着る。おまけに黒毛和牛も好きだからライダーでもないのに黒ずくめの本革ライダースーツを着ることだってある。  なりはつぶらな瞳と馬面と布袋腹が特徴で牛丼やハンバーガーやステーキやすきやきが大好きな大の牛肉党である上にアイスクリームやヨーグルトも好きだから本人は何の自覚もないけど、皆に非常に迷惑をかけている。それどころか地球規模で大迷惑をかけている。何故って牛の肉製品や乳製品を加工する畜産は二酸化炭素より強力な温室効果を発揮するメタンガスや亜酸化窒素の主要な排出源なので牛の加工食品を好んで食べるお父さんは地球温暖化を促進させる一員と言えるからだ。尚且つ前述の通り牛に因んだファッションを好み、容貌が牛みたいだから牛に酷似し牛グッズを収集する牛マニアなんだ。だから僕はいつかお父さんが本物の牛になってしまうんじゃないかと危惧する反面、純然たる牛になったお父さんを妄想してはくすっと笑う。  あと特筆すべきはうんこの臭さだ。勿論、牛肉を沢山食うからでお父さんが糞した後にトイレに入ることは無茶苦茶、耐えがたいことだ。嗚呼、思い出すだけでも悍ましい。バキュームカーの傍にいる方がずっとましだ。正にTHEトイレ地獄・・・でも、お父さんは地獄だと思っていない。却って天国だと思っている。なにしろ全国牛舎巡りツアーと題して毎年観光旅行に行って態々牛舎の臭い匂いを嗅いで喜んでいる位だからね。で、時には糞した後、トイレにずっと籠っていることがある。だから僕はそういう時に糞したくなると、むっちゃ困る。時には臭すぎてトイレの中に入れないもんだから自慢じゃないけど、ちびったことが数回ある。  或る日、お父さんと妹とで焼き肉屋に行ったらお父さんは牛のカルビを無茶食いした後、ビールを飲みながらげっぷをしまくった。だから僕はお父さんがげっぷをする度にメタンガスたっぷりの牛のげっぷを連想して地球温暖化が促進されると思って心配になった。で、お父さんの鼻環を見ても笑えなくなった。客のお姉さんたちもオヤジギャルよろしくビールを飲みながらげっぷをするから更に心配になった。  僕は当然ビールを飲めないからげっぷはしない。でもおならをするからメタンガスたっぷりの牛のおならを連想して更に更に心配になる。大人は我慢するらしくおならはしない。その代わりげっぷをするのだ。恐らく居酒屋は一事が万事この有様だから僕の将来を思うと、心配になるのは当然のことだ。お姉さん方、頼むからそんなに牛肉をガツガツ食うことを良しとしないでくれ。嗚呼、嘆かわしい。はしたないとも思わない焼き肉好きのお姉さんたち。それに倣うかのように妹も焼肉にがっつく。でもお父さんは注意しない。女らしくさせる躾がまるで出来ないのだ。お父さんに限ったことではない。だから世の中の女が皆だらしなくなる。すると地球温暖化に拍車がかかる。この僕の論理に狂いがないことは争えない事実だ。だから嗚呼、心配心配、僕の将来。お父さん、なんとかして!笑う門には福来るとか言って、そんな風に笑ってるだけじゃ駄目だよ!それじゃあ他の大人と同じで問題を棚上げにした上で笑ってりゃあ幸せが来るんだよと言ってるようなものだ。このままじゃほんとに牛になるよ!お願いだから牛にならないで!お父さん!  そんな僕の心の叫びを余所にお父さんと妹はタンやヒレやロースにも箸をつけ、パクパクと食べて行く。そしてオヤジギャルたちも・・・嗚呼、みんな牛に見えて来た!うわああああ!牛化する人間たち!
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