なので私は彼を殺します。

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 彼氏が浮気をしている現場を間接的にですが、目撃してしまいました。なので私は彼を殺そうと思います。  「ちょ、待てよ何だコレ?」  まだ状況を把握しきれていないようです。  椅子に座る彼の両手両足は、ガムテープでグルグルに巻き付けてあり、暴れてガタンゴトンと電車のように、身体が左右に揺れています。  本音を言うなら、口にもガムテを付けたかったのですが。仕方ありません。  「何って、貴方を殺害するためですよ」  「へ……殺……はぁ!!?」  「何か問題でも?」  「よくすっとんきょうな顔で言えるな!?」  え、私そんな間抜けな顔で発言していたの?  ここは密室で鏡が無いので、自分が彼の目にどう写っているのか、よく分からないんです。  ただ彼の瞳を覗き込むと、いつもの私が居るだけ。そして彼の手足が拘束されているだけ。  体の自由が効かないだけで、喋れるんだからいつも通りではありませんか。  「大体、何で殺されなきゃならないんだよ!」  「この期に及んで、すっとぼけるなんて」  「すっとぼけてねぇよ!」  「この写真を見ても口答えするつもり?」  すっと彼の目の前にスマホを出しました。  彼と他の女性が一緒に、仲良く歩いている画像を突きつけてみます。  「あー……これ友達だよ。誕プレ買うのに付き合わされてただけだって……」  「じゃあこれは?」  横に画像をスライドすると、彼と女性が抱き合っている画像が表示され、さらにスライドするとキスしている画像が表示されます。  さすがにこの画像は効いたのか、彼の顔がサーっと青ざめていくんです。  この表情を見ていると、思わずプッと吹き出してしまいました。この写真を送ってくれた友人には、感謝しきれないです。  さて、彼はどう言い逃れするのでしょう?  「いや……これは、その……」  「さっきの写真と同じ服を着てるから、同じ女性だってことは分かりますね」  「……はい」  「へぇ……私という『彼女』がいながら、他の女性にも大胆な行為をするんですね」  「えっとぉー……」  「じゃあ殺しまーす」  「ちょっタンマァァァー!!!」  効果音がつきそうな鋭い刃を向けると、彼は「ヒェッ」と情けない声を出しました。  あー、残念。あの女にも見せちゃったのかな。彼の魅力も弱さも、全部全部。  独り占めしたかったのに、許さない。あの女も彼も殺さなきゃ、気分が晴れないでしょ?  「早まるな、一旦落ち着けって!」  「落ち着いてますよ? それよりこれ、今日のためにわざわざ研いだんです。刺されても痛くないように」  「なぁ、殺すなんて嘘だろ? そんなことしたら、お前が警察に捕まるだけだぞ!?」  「ああ、大丈夫ですよ。覚悟が出来るようにカウントダウンで刺しますから」  「そういう問題じゃねぇ……」  「安心して下さい。3秒前からです」  「3秒……って、え? 少なくない!?」  「さーん、にー、いーち」  「もう浮気しません女の子とも話しません合コンとか誘われても行きません告白もすぐに拒否するしチョコも断るからぁぁぁ!!!」  彼と刃との距離、わずか1㎝。  彼の叫び声を聞いて、フッと笑みを溢す。  まあ、それだけ聞けたら十分ですよね。  「2度目は許しませんからね?」  「す、すみませんでした……」  背後に回り込み、後ろから彼を抱きしめました。心臓がバクバクと高鳴っているのが分かります。私は鼻唄を歌いながら、震える彼に向かって、問いかけました。  「浮気も認めたし、女の子の友達も沢山いることが分かりました。合コンも行って告白も受けて、沢山チョコレートも貰っているようですね。詳しく話を聞かせてくれませんか?」  ふんわり柔らかく彼の前で微笑むと、彼の顔は更に血の気が引いていきます。私には内緒で、何か色々な事情を隠しているようです。  しまったバレた、と顔に思いっきり書いているではありませんか。  「はい殺しまーす」  「話を聞いてぇぇぇ!!!」  彼の手足のガムテープが取れるまで、あと何時間かかるでしょうか?
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