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12月は、演劇部の恒例行事【舞台発表会】がある。
今年の演目は『ピーターパン』に決まった。
あ、私は演技がしたくて
部に入った訳では無く…
舞台の背景のセットや照明
とにかく、裏方の仕事がやりたくて
演劇部に席を置いている。
今から話す出来事は…
その『ピーターパン』の稽古をしている
学校の体育館で私と部員が経験した
奇妙な話なんだけど…。
◆◆◆◆◆◆
「ピーターパン。楽しみだね!
今からワクワクしてる! まさか、私が
ピーターパン役を演らせてもらえるなんて♪フフっ」
放課後、部活の稽古を終えて私が
帰り支度をしている横でクラスメイトで
高校に入学してから、何故か
私に懐いて離れない河崎真依子が
主役のピーターパン役を
先輩たちを差し置いて勝ち取ったことを
満面の笑顔で喜んでいた。
「ローラースケートが決定打でしょ?」
はしゃいでいる真依子の後ろで
同じ1年生の田中リカと佐藤絵美が
真依子に向かって、意地悪く言い放っていた。
そう、ピーターパン役を演じる演出に
ローラースケートを取り入れることに
なったことで、唯一部員の中でローラースケートを
得意とする真依子が、選ばれることに
なったことは事実である。
「それも実力の内よ! ほらっ、河崎さん
顔色が良くないわよ! 疲れてるんでしょ?
うちの演劇部は、稽古ハードだからね!」
私たち後輩を心配して顔を出してくれていた、
夏に引退した3年生の広沢彩芽先輩が
リカたちの頭をポンポンって優しく
叩いてから、真依子にビタミンドリンクを
差し出して笑っていた。
そして
その時だった。
《ドンドンドンドンドンドンッ!!》
「「「ひっ!?」」」
「な、何っ? 今の?」
稽古場にしている体育館のどこからか
人が壁かドア?
もしかしたら、床かもしれないけれども
とにかく凄い音が、体育館中に響いていた。
ドンドンドンドンドンドンッ!!
「「「キャーッ!!」」」
更に大きな音が体育館中に響いたので
私たちは、パニックになって
悲鳴を上げて一斉に出口に向かって走って
体育館を転がるように飛び出していた。
その後は、無我夢中で家路についたので
あの音が何だったのかは、わからないまま
数日が過ぎていたのだけれども。
更に1週間後の早朝
ある、ニュース速報を見た瞬間
私は、再び凍りついていた。
それは、
私たちが通う学校の
あの体育館の屋根裏から、
身元不明の男の変死体が発見された
というニュースだったからだ。
男は、60代の男性で死後半月は過ぎていたそうだ。
ということは、あの時の…あの音は…もしかしたら…
【END】
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