なにかが甘くてたまらないのです

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ちらと流し台に目を向けますと、バナナ、キウイフルーツ、さくらんぼのパック、それから缶詰がふたつ。中身はナタデココとパイナップルのようです。わたしは確認したところで素早く視線をそらします。 どうやら今日のお楽しみは、フルーツをベースにした何かのようです。 声をかけられていないのに、気配を察した美しいお姉様がたがわらわらと集まってきます。もはや金曜日の午後三時に反応するパブロフのワンちゃんたちです。これから何が起きるか、彼女たちは知り得た上に心構えを済ませているのです。 期待に満ちた美しい笑顔を並べられますと、いろんな意味でずるいなぁと思ってしまいます。 わたしは心の中で世界の矛盾についてぼやきます。 天は二物を与えずというのは嘘でしょうか。美人たちが主任のスイーツを貰うなんて、すでに二物を与えてしまっていますよ神様。 皆様、そんなに綺麗なお肌、ビタミン不足のはずはありません。それ以上ビタミンはいらないんじゃないですか。ビタミン過剰症っていう病気もあるんですよ怖いですねー。 第一、日渡主任の爽やかな笑顔が添えられたスイーツなんて、どこまで豪華な午後のひとときなのでしょうか。笑顔はプライスレスですけどタダより高いものはないとも言いますからね。 とはいえ羨ましくて羨ましくて仕方ありません。 わたしは込み上げてくる負の感情を抑えながら、気づいていないふりを決め込んでパソコンと向き合います。 これ以上視線を送ったら、主任のデザートを期待しているあさましい女と思われてしまうことでしょう。
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