前半【A視点】

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前半【A視点】

バブルが弾け暗い雰囲気漂う日本のとある田舎にAという男子中学生がいた。 バス停で雨宿りをしているAは、やむ気配のない雨を見てうんざりしていた。ほとんどバスの来ないこの寂れたバス停は役割を果たせていない。毎度毎度なんて不便なのだと毒づきながら、しっかり者の兄が帰り道を通るのを待つ。こんな時は、兄の傘に入れてもらい帰るのがAの日常であった。 しばらく待つと、バス停にバスがやってきた。しかし、このバスは自宅とは逆方向に向かっていくバスだ。これに乗る意味はない。誰も降りることはないので、いつも素通りしていくバスでありAは気にも留めていなかった。 だが、そのバスが停まった。どうやら珍しく下車する人間がいるらしい。立地が悪く、地元の人間ですらほとんど下車することのないこのバス停で降りる人間とはいったいどんな奴だろうかとAはバスを見る。 バスから白い陶器のような肌をした女性が降りてきた。Aが見たことのない美しさと気品を持ち合わせており、Aの目は自然とそのスレンダーな肢体に惹きつけられた。長く黒い髪の毛は雨で濡れていた。 Aは数秒意識を飛ばしていたが、我に返り咄嗟に女性から目を背ける。気まずいので早くどこかに行ってほしいと思いながら顔を伏せていると、女性がバス停のベンチに座る音がした。そして、女性がいきなり呟いた。 「私、あなたのこと好きよ…」 Aは驚き女性を見ると、その女性はAをまっすぐ見据えてもう一度呟いた。 「私は、あなたのことが大好きよ。一目惚れだったわ。あなたに会えて嬉しいわ。」 その女性はAに抱きつき身体を密着させた。Aは見知らぬ女性のいきなりの告白とその行動に目を白黒させた。女性に何の耐性もないAの心拍数は上がり続けた。Aの処理能力が追い付かず、Aは意識を失い卒倒した。 「…」 「起きろ、A!」 Aは自分を呼ぶ兄の声で目を覚ました。 「あれ?あの、女の人は?」 「女の人?寝ぼけているのか?」 兄によるとバス停には女の姿はなく兄が通りかかった時には眠っているAがいただけだったとのことだ。Aはしばらく混乱していたが、今のことは夢の中の出来事だったと思うことにした。このバス停に人が来ることは、滅多にない。それに見知らぬ女がいきなり告白してくるなんて、あまりに突拍子もない展開だ。最近、疲れていたから寝落ちしてしまったのだろうと考えた。
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