絵しりとり

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絵しりとり

 暇だから『絵しりとり』をしよう。  雨の休日、妻が提案した。  私はその提案に乗り、ノートを取り出す。そして、夫婦での『絵しりとり』合戦が始まった。    先攻は私だ。まずは犬の絵を描き、妻に渡す。妻は絵を見ると、すぐに頷きペンを走らせた。  妻から渡されたノートを見ると、先程描いた犬の絵の横には、四角に目と手が付いたものが描かれている。少し首を傾げたが、すぐにピンときた。なるほど、『ぬりかべ』だ。  『べ』か…よし、ちょっと捻ってやろう。  私はニヤリと笑うと、牛の絵を描き渡した。  妻は、「え?」と呟き難しい顔をしたが、どうやら合点がいったようで、手を動かしだす。  そうして、妻から返ってきたノートには、不可思議な四足の動物が描かれていた。目は小さく鼻は大きい。短い手足には鋭い爪が付いている。これは酷い。とても似ていないがおそらく『コアラ』のつもりだろう。  私は自分自身の察する能力を高く評価すると、今度はラッパの絵を描いた。  再び妻の表情が曇る。「ええ…?」と言いながらも、とりあえず描き始めた。  そうして妻が見せた次なる絵は、気味の悪い模様が付いた縦長の果物のようなものだった。  これはなんだ…?私のラッパが伝わっているなら『パ』から始まるもの…まさかとは思うが、これは『パイナップル』か?それなら…。  私はその絵の横に、首や手足が長く、1つ目で、体全体が鱗で覆われてる生き物の絵を描いた。  「ちょっと、これ合ってる?」妻が言う。  あまりに繋がらなくなったようで、私達は答え合わせをしてみた。  「あなたのコレは何?」  妻が、私の描いた2つ目の絵を指す。  「これは少し捻っていて、牛を『べこ』と言わせたかったんだ」  「もう違う。私のは『べ』で終わらないわ」  「え?『ぬりかべ』じゃないの?」  「違うわよ。コレは『ぬらーど』よ」  「ぬらー……え、じゃあ、どうして次は合ったんだ?『べこ』からの『コアラ』じゃないの?」  「違うわよ。あなたのコレが凄く下手な『どんちょっちょむ』かと思って、『むじむじ』を描いたのよ」  「むじむじ……じゃあ、次は?ラッパのつもりだったんだけど」  「全然当たってなかったのね。それは『じかいやす』だと思って、私は次に『すぬつくり』を描いたわ」  「パイナップルじゃなかったのか…」  「じゃあ、あなたの最後のはなんだったの?」  私はパイナップルの『ル』のつもりで、最後に描いた生き物の絵を指して答える。    「『ルシャーナ』。君を描いたんだよ」
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