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お父さんとお母さんが嫌いだ。お父さんとお母さんは喧嘩ばっかりで、いっつも怒ってばかりいるんだ。何でそんなに怒っているのか僕にはよくわからないし、よくもそんなにも怒ってばかりいられるなぁって、関心してしまうくらいなんだ。
二人はいっつも、くだらないことで怒っている気がする。
よくお父さんが言っているのが、
「なんだその言い方は」
お母さんは、
「何よ。その態度は」なんだ。
だから僕は、その言い方というものを家で学んだ。それに、相手を意識する態度というものを学んだ。
そんな二人の事を見るているから、お陰で先生達から褒められるようになったんだ。
「丁寧な言葉遣いで、礼儀正しいわねミキト君は。きっと、ご両親の教育がしっかりしているのね。でも、それを守るミキト君はすごいし、偉いわ」
そんな事を言われた。僕は先生に教えてあげたい。
「先生、それは違うよ。二人はそんな事を教えてくれたことなんて一度もないよ」って。
だって二人は、いつも大きな声で怒ってばかりいるんだから。僕になんか目もくれずにね。
お父さんとお母さんに、そんな事を一度も教えてもらった事がない。放任主義。そんな言葉がぴったりらしい。おじいちゃんがそう言っていたから、間違いないよ。
おじいちゃんは二人と違って優しいし、物知りだった。それに、怒っているところなんて一度も見た事がない。どうしてあんなおじいちゃんから、お母さんみたいな人が生まれたのかと思うと、本当に不思議だよ。一緒に暮らしていたら、そう思うはずだよ。きっと。
お母さんなんて、たまに八つ当たりをしてくるんだ。怒りの矛先を僕に変えるんだよ。本当に嫌になる。そんな人が僕に礼儀を教えてるって? 本当にどうなってるんだろ? もう、よくわからないや。
そんな、お父さんとお母さんのいる家には居たくなくなる。当然だよね。そんなの、一緒にいて楽しいわけがないもん。だから僕は時間を見つけて、よく外に出るんだ。
外に出るのは、朝と夜が多い。その時間に二人は喧嘩をよくしているからね。
僕は家の中にいるよりも、外にいる方が好きなんだ。夜は真っ暗で、風が心地良い。朝昼も気持ち良いよ。いろんな匂いが気持ちを慰めてくれるしね。
僕が住む町は、とても静か。それに星が綺麗なんだ。家は山に囲まれている田舎っていうやつ。
川の声や虫の声。時々、山の奥から動物の声も聞こえてくる。あれはいったい誰の声なんだろう? あと、山の声も聞こえるんだ。はっきり聞き取れない声なんだけど、微かに声が耳に入ってくる。山に声があるって知ってた? 知らないかな? だったら先生やクラスメイト達と同じだね。
みんなに、山の声の事を話したことがあるんだ。だけど、僕がその話をすると、みんな笑って僕を馬鹿にしてきた。あのおじいちゃんだって、笑ってちゃんと聞いてくれなかった。だから僕は、この話を誰にもしなくなった。だけど、本当に山は声を持っているんだよ。本当だよ・・って言いたい所なんだけど、実はその声の主は、山ではなかったんだ。
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