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新学期が始まり、学校では早々に文化祭の準備が始まった。陶也のクラスではゾンビ喫茶という何だか趣味の悪い出し物に決まり、クラスのみんなは盛り上がっていたが、友達も特に居ない陶也は教室の隅でそれを眺めていた。
役割も当日みんながやりたがらない裏方の仕事に回された。去年も大概、こんな感じだった。また今年も息を潜めてやり過ごそうと思っていたら、突然、陶也の元に蒔田さんが現れた。
「ねえ、如月君いなーい? だれか如月君、呼んできてー」
学園のアイドル的存在である蒔田さんが、いつもカマドウマのように目立たず陰気に棲息している陶也を呼ぶもんだからクラスの人間はみな驚いた。
普段、陶也の事など無視していたクラスのリア充然とした男子が、「何で蒔田に呼ばれてるの?」とすごく不思議がった。陶也は「去年、同じクラスだったから」と言って軽く済まし、蒔田さんの所に行った。すごく気が進まなかった。
「これ、イザヤさんに渡してくれる?」
と言って差し出されたプリントを見た。蒔田さんが所属する生徒会の文化祭イベントについての詳細だった。
内容を読んだ瞬間、陶也は退いた。
流石、あざとい。企画? いや計画とでも言いたくなる内容だ。
「あたしが一応、もしもの場合の通訳として、ずっと一緒にいるから、イザヤさんによろしくって言っといて、あー、すごく楽しみ~」
と朗らかに去っていった。
陶也はもう一度、受け取ったプリントを確認した。イザヤがこれを了承するのだろうか? 正直、イザヤが学校に来てくれるのは嬉しかったが、この企画を目の前で見せられるのは嫌だった。
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