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陶也は教室のパーテーションで仕切られた裏方で、ぼんやりと窓の外を眺めていた。クラスで決められたドリンク作りという陶也の仕事も、ほとんどが同じ時間、当番となった女子達がてきぱきとこなしていたので、特にやることがなかった。
時折、彼女らの会話からイザヤの話が聴こえてきた。
「蒔田さんが連れてきた人、本当に格好いいよねー」
「あたしもびっくりしたー。その辺のモデルか俳優より断然格好いいし、背も高いから近くに寄っただけでドキドキしちゃった」
陶也はこっそり頷いた。そうなんだ。イザヤは驚くほど格好いい。本人は自分の事をゴキブリと言って、ちっともその意識がないようだけど、初めて陶也と街に出て買い物に行った時も、振り返る女の人の多さに陶也は驚いた。みんな遠巻きにイザヤを見て行く。まあ、それだけ格好いいせいで、蒔田さんに目をつけられてしまった事が面倒い。蒔田さんも遠巻きに見てるくらいだったら、可愛いのに……なんて考えていたら、聞き捨てならない話が耳に入ってきた。
「あの人、蒔田さんの彼氏なんでしょ。流石、帰国子女よねー。あんな格好いい外国人彼氏なんて本当に羨ましい」
(ん?!彼氏???)
陶也は眉をひそめた。何でそんな話になってる?
「気心知れたケンカップルって感じだったね」
陶也は目を剥いた。
(いいえ、違います!きっと、それ、イザヤはガチで嫌がってます!!)
陶也は眉間に皺を寄せ、次第にイライラしてきた。思っていた通りの展開だった。
すると、表で大きな歓声が上がった。陶也は立ち上がり、窓の外、バスケットコートに集まった人だかりに目を向けた。
コートの中央にはイザヤが居た。
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