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クラスから出たゴミをまとめて、それを捨てに陶也が廊下を歩いていた時だった。
職員玄関の近くにある、自販機の前で神田達がたむろしているのを見付けた。
奴らに見付かると面倒だと思い、陶也は彼らに気付かれぬよう、遠回りをしようとしたが、彼らの会話の中に、イザヤの名を聞いて足を止めた。
「蒔田も本当に馬鹿な女だよな。すっかりイザヤとかいう、あのアメ公の彼女気取りだ」
「あいつは元からビッチだからな」
「調子に乗りやがって、そろそろ地獄へ突き落としてやろうぜ!俺は昨日からその時が楽しみで眠れなかったわっ」
「まあ、待てよ。もっと学校中があのアメ公で盛り上がった時が面白いんだから」
あー、早く来ねーかなー、その時、と言いながら3人で笑い合っていた。
陶也は直ぐ近くの階段裏に身を隠し、耳をそばだてた。
(こいつら何か企んでいる?)
「これってさ、公表したら学校自体もやばくなるのかな?」
「ヤバいんじゃね? 少なくとも保護者が黙ってないだろ」
「如月もこれで学校に居れなくなるかもな」
「いいんじゃねえ、あいつ、どうせぼっちじゃん。学校に来る意味ある?」
違いねえ、と言って奴らは笑った。
「それにしても、如月もよく平気だよな。殺人犯と一緒に暮らしてるなんてさ」
神田の言葉に、陶也の体は硬直した。
(何故、神田がそれを知っている──?)
「あいつも知らないのかもよ。知ってたらあの臆病者が一緒にいられる訳ないだろ。知った瞬間、小便ちびるんじゃね?」
「おー!それも見てみたいな!」
「ぎゃはは!益々楽しみになってくるじゃねぇか!」
「保護者も含めた校内一斉メールのやり方は?」
「ここにあるぜ。親父が役員やってるっつー、クラスの奴からかっぱらって来させた」
「後はあのアメ公の犯罪記事を添付すればいいだけだ。楽しみだな」
「ああ、これであのアメ公もここには住めなくなるだろう。人殺しの癖に、日本になんか来るな!アメリカに強制送還だ!」
そうだ!そうだ!と奴らが囃し立てる言葉を陶也は遠くに聞いた。
(──イザヤが危ない!)
そう思うと、陶也の腹の底から、地殻を破るようにして、赤いマグマのような何かが膨れ上がった。
気が付けば、彼らの前に陶也は立ち塞がっていた。
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