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 廊下の人だかりを掻き分け、陶也は校内を走った。  「きゃあ!なに!」とびっくりする女子の声や、「うわ、危ねぇ!」という男子の声のする中、陶也はひたすら走った。  後ろからは、「どこに行った!早く探せ!」という神田達の怒声が聞こえる。  陶也は角を曲がり、周りに目撃されていない事を確認して、普段から人の出入りの少ない美術準備室に滑り込んだ。そして、デッサン用の彫刻が並ぶ棚の下部を開け、間仕切りを外し、壁に立て掛けると、その中に身を隠した。  スマホの通話はそのままにしていたので、通話口からは、『どうしました?何がありましたか?』という声がしていた。  陶也は呼吸を整え、校内の男子生徒が半年前の女子中学生の自殺に関与している証拠を手にし、そいつらから追われていると答えた。そして、その証拠がある場所と彼らの名前を教え、今は身を潜めていることを伝えた。電話の向こうは直ぐにパトカーを向かわせると約束してくれた。  陶也は一先ず、息をついた。  だが、通話を切った途端、今頃になって手足がガクガクと震えてくる。  急に、怖くて怖くて堪らなくなった。  初めて──。  他人に力の存在を口にした。  こんな力があると周囲に知られたら、自分はどうなってしまうのか?  幼いの頃から抱いてきた不安が、またやってきた。  それは、誰もが陶也を気持ち悪いがって、忌避し、近付かなくなるかもしれないという恐怖だった。  そして、いつしか人々は自分を殺しに来るのではないか?  今の神田達のように……。
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