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陶也Side
「陶也。ちょっと話をしたいのだけれど、いいか?」
最近、背中が痛いと言って病院へ行った祖父が、家に帰るなり陶也を仏間に呼んで座らせた。ちょうど学校から帰ってきて犬の散歩に出掛けようとしていたところだったから、愛犬のボーダーコリーは肩透かしを食らってそわそわしている。
散歩から帰ってきてからでもいい?と、言おうとして、祖父の青い瞳を見るなり陶也は口をつぐんだ。いつもなら青く澄んだ空のような瞳が迎えてくれる筈なのに、今日は曇った灰色に見える。
「どうしたのお爺ちゃん? 病院で何か言われた?」
陶也が訊ねると、祖父は重い口を開けた。
「……陶也……すまない。爺ちゃんはもう、長くはないんだ。膵臓癌だった。もってあと3ヵ月……」
死神の鎌が突然、喉元に突き付けられた気がした。
「な、何を言ってるの……お爺ちゃん……。嘘でしょ?」
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