陶也Side

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 陶也に両親はいない。それなのに、3ヶ月後には祖父がこの世から居なくなる──。  受け入れがたい現実を突きつけられ、足下が奈落の底へ落ちる。  今年で17歳になったとはいえ、陶也は障害のため他人とのコミュニケーションに難がある。今の状態で社会に放り出されても生きていく自信がない。そんな陶也の不安を感じ取ったのか、祖父は陶也に手を伸ばし、きつく抱き締めた。 「……でも心配はするな!爺ちゃんが居なくなっても、代わりとなる者を呼んだから!!」 「代わりの者?」 「アメリカにいる、もう一人の孫なんだが、きっとお前の助けになってくれる」 「お、お爺ちゃんの……孫?」  陶也の他に孫が居るなんて初めて聞く。でも、考えてみれば祖父と祖母はお互い二度目の結婚なのだ。ならば、アメリカに孫が居てもおかしくない。  祖父は生粋のアメリカ人だ。陶也とは違い祖父の瞳は青く、今は殆ど白髪となってしまったが、元は見事なブロンドだった。  祖父とは、陶也が5歳の時、初めて出会って、一緒に暮らし始めた。 「お爺ちゃんに、孫なんて居たんだ……」 「ああ、居たんだ。10年前に一度だけ爺ちゃんがアメリカに帰っただろ? その時、爺ちゃんも初めて会ったんだ」  祖父の指がきつく陶也の肩に食い込む。すると、次の瞬間──。祖父よりも青く深い海色をした瞳の少年が脳裏に映し出された。それは現在陶也が居る仏間の情景とは全く違う。祖父がいつか見たであろう記憶の情景であった。
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