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ガラスで仕切られた部屋が見える。
グリーンの官帽を被った看守らしき人がその前に立って、祖父に向かって何かを言った。だが、祖父の耳には何も入って来ない。祖父は向かいのガラスの居る、オレンジ色の囚人服を着た少年に目が釘付けになっていた。
少年の深い海色の瞳は、誰よりも意志が強く、何者も打ち砕かれない鋭い眼光を放っていた。
『今さらてめぇは何しに来た!!この無責任野郎!!いつかあの女諸とも、てめぇもぶっ殺してやるからな!!覚えてろっ!!』
少年はガラスに手をかけ、そう叫んだ。年齢は陶也と同じ高校生くらいに見える。その少年が祖父に向かって憎悪を剥き出しに吠えていた。まるで、全く人慣れしていない狂犬のようだ。半袖の囚人服から見える腕には、所々生傷が見える。痩せて、健康状態も余り良くないようだった。しかし、瞳の輝きだけは、野生の猫か狼のように、爛々とした生気に満ちていた。
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