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陶也には、幼い頃から特殊な能力が有った。それは、人に触れれば、その人の過去が見えるという能力だ。しかし、それを誰かに打ち明けた事はない。本能的に、その事を話してしまえば、他人から避けられると思ったからだ。
陶也は特に、母に触れられる事を恐れていた。
赤ん坊の頃から何となく感じていた。
自分は望まれて産まれた訳ではない。
母に触れる度、陶也に流れてくる母の記憶。
母が子供が出来たことを父らしき人に伝えると、父らしき人は母に罵声を浴びせ、母を殴った。
母の怒りと寂しさが、身体中を駆け巡る。
悲しむ母を、陶也は感じたくなかった。そして、恨みと後悔に満ちた母を感じることが何よりも嫌だった。望んでない子供を、それでも産もうとした母は立派だったのかもしれないけれど、陶也にとっては、そこまでして産んで欲しくはなかった。
(いらないなら、いらないで良かったのに……)
「僕にこんな能力……なければ良かったのに……」
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