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「面白かったか」
斗鬼が弟妹達へ微笑む。
「うん!後は観覧車だね!」
笑顔で観覧車を指すのは、下から二番目の弟優鬼(ユウキ)。
「次はお兄ちゃんも乗ろうよ、最後だし」
長女真鬼が笑顔で提案。すると、一番下の弟光鬼(コウキ)も。
「そうだよ、兄ちゃん何も乗ってない。行こう」
斗鬼のスーツの裾を引っ張り誘う。斗鬼は苦笑いを浮かべて、光鬼の頭を撫でてやった。
「俺は仕事中だからな。お前達で乗って来い」
と、諭した所で。
「僕、観覧車に先輩と乗りたいですっ」
桃太が期待の眼差しと声で訴えてきた。斗鬼の眉間へ皺が寄る。物言いをと、口を開きかけたが。
「大丈夫よお兄ちゃん、私が優鬼と光鬼を連れて乗るもの。桃太兄ちゃんと乗ってあげて」
笑顔で言うのは真鬼だった。
「いや、しかしな……」
まだ渋る斗鬼へ、弟二人が両側より裾を引っ張って来た。
「兄ちゃん、桃太兄ちゃん一人はかわいそう。乗ったげて」
「乗ったげて」
何とも心配そうに訴える小さな弟達。何故か斗鬼の味方がいない状況。一体どうやって弟妹を手懐けたのかと疑念を持つ斗鬼だが、弟妹には弱い。渋々ながらも、桃太と観覧車へ乗る事に。
「――海ですよ、先輩。ほらっ」
観覧車内。向かい合い、腰を下ろす前から桃太は御機嫌。徐々に高くなる景色を指差し斗鬼へ話しかける。しかし。
「そうですね」
表情無く窓を眺める斗鬼は、声にも感情が無い。
「夏はやっぱり海かプールですね。家のプールも良いけど、海行きましょうよ」
「坊ちゃまがお望みでしたら」
又返ってきた声と、その態度へ桃太が流石に膨れっ面になった。
「先輩っ、せめて会話はこっち向いてくれても良いじゃないですかぁっ」
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