御先祖様のせいです。

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「兄ちゃん、桃太兄ちゃんとちゅーしたの」 「ちゅーしたの」  あどけない笑顔で突然飛んでもない事を問い出す弟達へ、斗鬼は固まってしまった。桃太は嬉しそうに頬を染めている。もっと言ってくれと。 「何を言ってるんだ、お前達っ」  少し叱る様な斗鬼へ、優鬼と光鬼は何がいけなかったのかと一度顔を見合せて。 「姉ちゃんがね。二人で観覧車乗ると、ちゅーする時があるって」  真鬼を睨み付ける斗鬼。僅かに角が目立ち出していた。 「真鬼っ」 「だって、実際そんなのもいるもん。それを教えてあげただけよ」  悪びれる事無くあっさりと。兄には強気な様だ。兄が答えてくれそうに無いので、桃太へ近寄る弟二人。 「ちゅーしたの、桃太兄ちゃん」  光鬼が訊ねた。桃太はやはり嬉しそうに照れている。 「いや、それは次になるかなって……」 「今回も次も無い。弟達へ妙な事を言うな」  空かさず突っ込んだ斗鬼から見えた角と牙。桃太へは、何をどう言っても伝わらないのかと苛立ちは増すばかりだった。  思う存分はしゃいで、夕日が眩しくなる頃漸く遊園地を後にした一行。車の中では、後部座席で眠る真鬼、光鬼、優鬼。その姿をバックミラーで見た斗鬼は表情を和ませていた。本当に、楽しかったのだろうと。思えば、父の急逝以降こんな日は無かったから。助手席の桃太もかなり疲れた様子。眼を擦り、今にも船を漕ぎ出しそうだ。 「坊ちゃま、本日は弟妹等と遊んで下さり有り難う御座いました」  突然改まって言われた斗鬼よりの礼に、桃太の頭も目も覚めた。 「えっ……も、もう一回お願いしますっ」  ちゃんと起きた頭で聞きたいと願うも、斗鬼は運転に集中しているのか、無視を決め込まれてしまう。本当につれない御方。  だが、古よりある遺恨に少し変化がありそうな予感も。まだまだ諦めるつもりは無いと、決意を新たにする桃太であった。
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