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数多ある世界のひとつ。其処は、人と鬼が共存する不思議な世界。
鬼とは、その強大で不思議な力を持つ事から人々へ恐れられ、忌み嫌われてきた存在。そして、鬼はそんな力無い人を見下して来た。しかし、此の両族はある世で協定を結ぶ事と相成ったのだ。
其れは、人が知恵を発達させ文明を持ち、力を付け出した事と、鬼の中に純粋な血統の者が減って来たと言う事が大きかった。鬼の血統に変化が見られたのは、一族の者が人との交わりを持つ事があったからだ。生まれた子は、当然混血児。中には、鬼の力を持たぬ者もといった事態に。そんな血が増えては、鬼の威厳が損なわれよう。人の中でも、異形の者と交わるとはおぞましく汚らわしいと蔑視の対象。故恋だの愛だのと宣い、斯様な真似をした者は親兄弟姉妹迄も只では済まなかった。だが、其れでも両族で許されぬ恋に身を焦がす者は後を絶たず。人、鬼、其々の長は頭を悩ませた。愛とやらは、恐怖でどうにかはならぬらしい。そんな中、時ばかりが進んでいたが、若い者の考え方が変わり行く。何処かの時代で、そんな奴等が声を上げた。ならば、互いに利益がある様にと。
人は知恵と文明を鬼へ提供。鬼は、個々が持つ不思議な力を秘めた血、遺伝子を許す限り提供。此れで、共に一族を同格に発達させていく事にしたのだ。争う事も、互いを支配する事も出来ぬ状態へと。
今は昔、そうなる迄には本当に本当に長かった。しかし、良くも悪くもそんな古からのお付き合い。円満に両族が暮らす姿もある反面、そうでない事も勿論あったと言う。
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