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戯れ
午前中を牛の世話と放牧地のメインテナンス(と言うか見回り、散歩)に当てたリルオーは昼食を取った後からツギノーニ家のエリアに勝手に侵入し彼らに飼われている牧羊犬バウと戯れることにした。
バウは犬のくせに朝のエンジンの掛かりが悪く状態がアクティブになるのは
午後一くらいからだった。
そのため朝に羊を畜舎から出して牧草地に追い立てるのにはまるで役に立たず
ツギノーニ家の人たちからは呆れられていたのだがリルオーのその日にやる
べきルーティンワークが一段落するのが大体、昼前だったのでその辺から調子を上げてくるバウはいい遊び相手だった。
いつものようにバウは日当たりのよい家屋の入り口付近の定位置でのんびりと寝そべっていた。
しかし誰か来る気配(リルオーであることはもうお見通し)を感じると素早く
立ち上がり脱兎のごとく(犬だけど)その誰かに向かって駆けて行った!
その面前に姿を現したのはやはりリルオー!
リルオーの方ももう心得たものだ。
「よし、来い、バウッ!」
「バウッ、バウッ、バウッ!」
手を広げて待ち受けるリルオーにバウは嬉しさのあまりありったけの力で飛びかかっていった。
バウはちょっとダーティーでおおらかな大型犬である。
そんなバウの体当たりをよけるでもなくもろに食らったリルオーは犬もろともその場に倒れ込んだ。
「元気だったか、バウ~ッ」
僅か一日ぶりなだけにもかかわらず犬に向かってそう話かけるリルオー・・・
「ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ」
続いてバウは吐く息荒くリルオーの顔をなめ回そうとする。
それだけはゴメンこうむる、とリルオーはバウの舌先とは反対の方に顔を
振ってそれを懸命によけようとした、がダメだった・・・・
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